2016年07月29日

ずぼらなユン、やぶれかぶれ



「どんな口癖だったの?」

「この国を 戦の無い平和な国、安心して民が暮らせる国にする。
 真秀良の国を作る」

「へえ」
 それなら分からんでもない。
 理想の国という意味なのかも。

「側近の個人的な記録の一部分が残っている。
 それにも 王の言動が時々記されているが、
 確かに 折に触れて言っていたようだ。
 『平和な国 真秀良』が合言葉だったらしい。
 真秀良という言葉に 確かなイメージがあったのだろうな。
 その側近に こんなことも言っている。
 『法と制度は大事だが、それだけが国ではない。
 法を破る者も 制度に逆らう者も出てこよう。
 時が移れば 見直しが必要にもなる。
 インチキする者、失敗する者、偽者やごまかしも おそらく絶えることは無い。
 だから、そんなことでは揺るがぬ 懐の深い国にするのだ。
 民が 元気で楽しく生きられる国を作るのだ』
 現代風に言い換えると こんな感じかな。
 その記録を見ると 豪快な王様だったらしい」

「真秀良王の名前が分かったらすごいね。
 おじいちゃんの名前が 教科書に載っちゃうのかなあ。
 ねえ、ねえ、お城の跡って どのくらい残っているの。
 名前のわかりそうなものがありそう?」
 真麻彦は 興奮して大はしゃぎをしている。

「調査は着々と進んでおる。 わしらは大いに期待している。
 『竜』と刻まれた石のかけらが見つかったのだが、
 町の名前か城の名前に 竜の字が入っているのではないか と睨んでいる。
 今は留山と呼ばれる山も 昔は竜山だったのかもしれん」

 …… 竜…… なんか引っかかる。
 心当たりがある気がするのは 何故だろう。 分からん。
 と考えている間にも おじいちゃんの話は続いていた。

「実は、他にも大発見があるかもしれんのだ。
 城跡から、石を組んで作られた小さい建物が見つかった。
 そんな建物が残っていること自体が奇跡だが、
 内部を調べたら 色々な物が残されていた。
 年月を考えたら 驚くほど損傷が少ない。
 石が特殊な働きをして 内部を適度な状態に保つのではないかと調査中だ。
 解明されれば これも大発見になる」

「うわあ、すごいや。 中に残っていた物に大発見は無いの?」
「もちろんあるだろうな。
 これから大発見のオンパレードだと思うぞ。
 石の建物を、わしらは宝物殿と呼んでおる。
 あっ、そうだ。 弓月にお土産を持ってきたんだった」
 おじいちゃんは、持ってきた荷物の中をガサゴソ探った。

「おお、これだ、これだ。 宝物殿にあった絵のコピーだ。
 今見ても 少しも古臭い感じがしない。 良い絵だ。
 描かれているのは、いい男だぞ。 きっと王子様だな。
 わしらは 真秀良王の若い頃ではないかと睨んでおる。
 傷みも色落ちも思ったより少ない。 日に当っていなかったからだろう。
 絵の端に、『星』という字が かろうじて残っている。
 他にも何か書いてあったのかもしれんが、
 残念ながら千切れてしまっていて、何なのか解っていない。
 昔は 今みたいに絵描きが署名なぞしないからなあ。
 王の名前の一部かなあ。 だったらすごいんだがなあ」

 渡されたコピーを見て 呆然とした。
 最近見たばかりの絵だった。
 火梛の肖像。 星来が描いた絵だ。
 古臭くないのは当然だ。
「………… 竜牙城……」

 ああそうか。
 火梛は もう呼んでも助けに来ない。
 この国、真秀良を創るために活躍している。
 きっと忙しいに違いない。
 櫓の上で ぼうっとしている暇はない。
 ――さようなら、王子様――  


Posted by mndjfhdjf at 18:55 Comments(0) life